正直エイトと旅し始めて間もない頃、こいつなんでこんな無表情なんだろな、て思ってたよ。

だってそうだろ?いっつもいっつもいっっっつも眉も動かさないで傍観者。お前はどこぞの大仏(やべ、大仏って仏教だったか?)か、て感じ。

自分は二の次、他の奴等(エイトに言わせれば、大切な仲間らしいけど)の安全が最優先。でも苦しい顔ひとつしねぇ。

機械みたいでわからねぇ奴だ。そう思ってた。


『遠慮会釈』



日も傾き、紅く染まり始めた大地。エイト達一行は最寄の街を目指しひたすら歩いていた。


「エイトー…今日はここで野宿にしましょうよ…私もう、くたくた・・・・・」

言うが早いかゼシカは早速その場に座り込んでしまった。

「そうだな、エイト今日はこの辺で休もうではないか。」

続いてトロデもそう言い、ミーティアを止めた。


「うー…ん。まぁ、いいか。今日はここで野営にしましょう。」


もうちょっとで街なのにな、などと小声で一人ごちつつもエイトがそう告げ、野営の準備が始まる。
顔にはそう出してはいないがククールも周り同様HP・MPともに底を尽きかけ、正に疲労困憊、満身創痍状態だった。

(どんな体力してやがんだ…エイトは。)


ゼシカやククールはまだしも、体力の塊ヤンガスでさえも喋る気力も無い位疲れ果てているのに、エイトは涼しい顔で薪を集めている。

(モンスターだってこんなに体力ねぇぞ…)

「ククール?ちょっとこっち来てくれないか。」


そんなことを考えてる間に考え事の張本人、エイトに呼ばれた。

「なんだ?疲れてんだから、手短にな。」



言いながらククールはのっそりエイトの方へ向かった。

「あのさ、ちょっとこれ見てよ。」

そう言ってエイトが手を差し出した。言われたとおりククールがエイトの手の中のものを覗いてみる、と。

「何だこれ…宝石…?」

エイト手の中で、ブルーがかった石が夕闇の僅かな光で淡く光っていた。


「へぇ、綺麗だな。どうしたんだ?これ。」

宝石をまじまじと見つめながら、ククールはそう言った。

「そこの木のうろに入ってたんだけど、ククールにあげようと思って。」

「……それもしかして口説いてんのか…?」

まるで女に言うような台詞を淡々と言ったエイトに、ついそんな疑問をこぼした。

「えっ…や、そんなつもりじゃ……唯、これククールの瞳の色にそっくりだったからさっ。」

エイトは途端に顔を赤くし、しどろもどろに喋りだした。その弁解の台詞も口説き文句のように聞こえてしまうのは、ククールのせいではないだろう。



今まで見たこともないエイトの表情に、ククールは少し驚いた。


(こいつ…こんな顔もできんだなぁ…)

エイトの人間的な面を見て、今までの自分の認識の間違いに気付いて。ククールはつい吹き出してしまった。


「く、ククール…?」


黙り込んだかと思えば突然吹き出したククールに不安になったのか、まだ赤さの抜けきらない顔でエイトが言った。

「エイトも人の子なんだなー…」

呟くようにククールは言った。

「え…?なんて言ったんだよっ。」


「いや、もういいんだ。…これからもよろしくな、エイト。これ、ありがたく貰っとくぜ。」



エイトの手中の宝石を手に取り、ウインクしながらククールはそう言った。エイトの新しい表情を見つけ、ククールは上機嫌で野営の支度を始めた。


「・・・・・・・・・???」



――当のエイトはといえば、疑問符だらけで取り残されていたが。



                       Fin.


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