俺の大好きな銀髪の彼には、一つ困った性癖があるんだ。普段はまだいいんだけど。限られた人にしかしないし。
唯、酒が入るとなると途端豹変するから頭が痛い。


彼は酔うと…―キス魔に変貌する。


このことを知ったのは最近でもないけど、未だ慣れるものではない。…慣れても困るけどさ。

あぁ…こんな物思いに耽ってる場合じゃなかった。なんせ、今現在進行形でククールのこの問題に取り組んでいるところなんだから。









【酒と彼とキスと。】









「ククール…そろそろ部屋戻ろ…?」
極力優しい口調で、諭すように言ってみたりしても。
「なんでだよっ。折角いい気分になってきたのによー…」
この通り、全く効果なし。
「ほら、周りの人見てるだろー……」



そう。先程からククールは俺の髪だとか頬だとか手の甲だとか…とにかくいろいろなところにキスしまくってるんだ。
押さえつけてキスをかわすこともできるかもしれないけど、 惚れた弱味というか…俺にはとてもとてもククールを邪険に扱えない。

兎に角、周りの客(言い忘れてたけど、とある酒場に居るんだ)の好奇の目だとか白い目だとかが。
ククールのせいでほとんど素面の俺には耐え難いものがあるんだ。

なのに。


「いーじゃねぇか別にぃ…オレ周りなんて気になんねぇし。」


ククールときたら俺の必死の説得もあっけなく却下する。
さっきまでは近くに居てくれたゼシカやヤンガスも、ククールが2人の手の甲に(ヤンガスにもしたことに、俺は心底びっくりした)
キスした途端引きつった笑みを浮かべて部屋に戻っていってしまった。


ククールだけここに置いて帰るって手もあったけど、俺がここから居なくなったら周りの客にキスしてまわるに違いないと思う。
そんな事考えるだけで胃が痛くなりそうだし、やめといた。
問題起こされるのも困るけど、なにより俺は嫉妬深いんだ。



「エイト、エイトー。」
「ん、何?」

「好き。」


えへー、と笑顔全開で言ってくるもんだから。


「んっ…」


思わずキス仕返しちゃったじゃないか。ククールの馬鹿。

周りの客がおぉだとかうわぁだとかいろいろ言ってるけど、最早気にならない。



だって。だってさ?いっつも何かと人目を気にするククールが。 場所によっては好きって言っただけでも怒るのにさ。
公衆の面前で笑顔で(しかも酔ってて少し顔が上気してるんだ) 好き、だなんて。嬉しすぎて、というか…刺激が強すぎて。



「…ククール……部屋、戻ろ?」
「……あぁ。」


さっきと同じ台詞だけど、ニュアンスが違う。
まぁ、なんというか今度は部屋に戻ることだけが目的じゃない訳で。
そんな俺の考えが伝わったのかもしれない。ククールは口の端を持ち上げてにやっと笑いながら立ち上がった。









まだまだ夜は長い……と思う。

















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